byakuyakou

東野圭吾  白夜行 ★★★★★

幻想的な黄色の表紙に惹かれて手にとってみれば、文庫本なのに1000円、約850ページという分厚さにそのまま無言で元の場所に戻す……といったことが往々にして起こっていそうな東野圭吾の代表作品。しかしそのハードルを乗り越え実際に読み始めてみると、これが実に素晴らしい作品となっている。

内容は悲劇というか、かなり救われない話なのだが、主人公である亮司雪穂の間にある絆は間違いなく美しい。主に70年代〜80年代という舞台設定もあいまって、退廃的な美しさが作品全体から漂っている。

さらにこの作品の特徴とも言える描き方が、主人公2人の視点では一切語られないということ。それによって解釈が自由になり、読者による感じ方に幅が出る。先に触れた亮司雪穂の間にある絆に関しても「本当に2人の間に愛はあったのか?」といった意見もある。人気作家の人気作品だけに議論も白熱したようだ。

それでも個人的には亮司雪穂を間違いなく「命を賭して」愛したと思うし、雪穂亮司を心の拠り所にしていたと思う。物語後半、雪穂のセリフには普通に感動した。このセリフは物語のキモとも言えるセリフだし、「白夜行」というタイトルの由来とも言えるセリフなのでここには書かないが。気になる人は文庫本826ページだ。それにしても「白夜行」というタイトルは主人公2人の人生を完璧に言い表し、さらに作品全体の美しさを凝集した、まさに神がかったタイトルだ。日本語って素晴らしい

ちなみにこの作品、2006年にテレビドラマ化されている。山田孝之綾瀬はるかが主人公2人を好演した。亮司雪穂の幼少時代を演じた泉澤祐希福田麻由子もよかった。武田鉄矢かなり微妙だったが。主人公を差し置いて前に出て来すぎだ、この人。ただし、特に雪穂に言えることだが、幼少時代のエピソードは映像にすると残酷さがより強調されるので、無理な人は無理だろう。

さらにこのドラマの主題歌は柴咲コウの「」なのだが、この主題歌がまた白夜行の世界にバッチリはまる良作。「君が幸せ掴むように 偽日になり祈ろう」という歌詞を聴いたときは、思わず視界が滲んだ。原作を読んで気に入った人は聴いてみてほしい。

とにかくこの作品は名作といえるだろう。今まで読んだ小説の中から3作選べと言われれば間違いなくこの作品の名前は挙げる。暗い雰囲気が大丈夫な人はぜひ一度読んでみることをおすすめする。

Secret

TrackBackURL
→http://kitznebi.blog123.fc2.com/tb.php/5-1ba0e156