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北村薫  ターン ★★☆☆☆

「新潮文庫の100冊」を眺めていたとき、背表紙の青がキレイだったので手に取ってみた。北村薫は名前を聞いたことがあったが、読むのはこの本が初めて。大筋は悪くないが、細かいところが気になる作品だった。

まず二人称で話が進んで行くのに驚かされる。二人称の小説は初めてというか免疫がないので、どう読み進めていけばいいものか戸惑った。それでも文体は読みにくいものでないので話を進めていくが……なんだかなぁ、現実味が薄いんだよなぁ。

この現実味の薄さの原因は主に主人公、真希の性格設定。良く言えば哲学的、悪く言えば何かと引っかかる物の考え方というか、鼻につくたとえ方をするのだ。真希の職業が芸術家ということで、「芸術家らしい物の捉え方だ」となればいいのだが、ワタシに芸術的センスが足りないのか、そこに親近感は得られなかった。一般人から見れば真希はかなり痛い人だと思う。こうなると二人称形式の話の進み方も、まるで妖精さんがしゃべっている風で主人公の痛さに拍車をかける。あながち間違ってはいなかったが

さらにこの声の正体が明かされていく過程は完全にメルヘンの世界たまたま曲がり角でぶつかった人は前世からの運命の人だったの的展開に、正直ちょっとついていけない。物語後半で登場する柿崎は、また極端な性格の持ち主で、悪い意味で個性的。少なくとも読者が肩入れできるような人物ではない。ちなみにこの柿崎真希に時間の意義を悟らせるためだけのかませ犬な扱いなので、少々いたたまれなくなる

散々悪い点を挙げたものの、よい点もある。真希の性格も細かいところは鼻につくものの、基本的な部分は常識人で、行動も筋が通っていて共感もできる物語の主旨がわかりやすいのもいい。非現実な世界観にあって、はっきりした主旨の部分は少々浮いた感じもするのだが、個人的にはそれまでのスローテンポから変わって、ラストに向かって突き進むスピード感として感じることができたのでアリだ。

小説、しかもミステリ系なんてそもそも非現実な話だし、この物語に限れば現実にはあり得ない現象、世界での話なので、作品全体にどうしても非日常な空気が漂ってしまう。しかしその非現実な現象が、あたかも実際に自分の身に降りかかったかの如く感じる作品の方が個人的には好きだ。作品の非日常感に輪をかける主人公の哲学的思考回路は、より非日常感を演出するための作者の意図なのかもしれない。そうだとすればまさに作者の思う壺だ。

世間的な評価は高いので、非現実感と哲学的な雰囲気を味わいたい人におすすめする。

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